つながらないリリヤンについて

メドレー(medley)というものは、音楽で言えばいくつかの曲を連続して行う演奏のこと、
スポーツで言えば陸上や競泳で行われるグループ競争のことである。
今回のBプログラムは古今東西の戯曲のメドレー上演である。
ところで、メドレーとはなんだろう?
独立した個々の曲や種目があるのに、なぜ並べてつなげようとするのだろう?

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リリヤンというものは、かつて女の子たちの間で流行した遊びである。
そもそもはレーヨン(人造絹糸)を細く編みこんだ糸の名だそうだ。
のちに、小さな筒状の編み機を使って紐状に編む手芸遊びにもこの名が使われるようになったという。
昭和の女の子たちは、こぞってこのリリヤン遊びにハマった。
漫画『ちびまる子ちゃん』にも登場する懐かしのアイテムである。
リリヤンというものは、なんとも言えない味わいである。
始めに星形に糸をかける。そして針にかけた糸を延々と編み込んでいくと、蜘蛛の巣のような筒状の編み物ができる。
別の色・別の素材の糸をつなげて編み込むことも可能であり、そうすると筒状の編み物はよりカラフルに、または異なった手触りになってゆく。
リリヤンメドレー。星から始まり、蜘蛛の巣、筒、別の色、別の糸。
一つの編み機から、次々と展開してつながっていく。
にも関わらず、そのつなぎ目は滑らかで、糸と糸は整然と絡み合っている。
なぜならば根本的な土台は編み機の針であって、編み手は一定のリズムで編むからである。
だが、リリヤンというものは、ただひたすら筒状の編み物ができていくだけである。
編んだことがある人なら思うだろう、「使い道がない……」と。
主にはマフラーやブレスレットになるらしい。
そのほかにも、コースターやストラップ、靴ひも。
ビーズを一緒に編めばお洒落なアクセサリーにもなるが難易度は高い。
最近ではなぜか、壁に飾って文字を描くのも流行っているらしい。
役に立つのか、立たないのか、いまいちわからない。
でもなぜか、リリアンそのものも、できた編み物も、どうも憎めない。
その様相には愛嬌すら感じられる。
そもそもなぜ、糸を編んでつなげる遊びを作ったのか? それはわからない。
人というものは、流れをもってひたすら紡いでいく作業それ自体が、ただ好きなのかもしれない。

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今回のBプログラムは古今東西の戯曲のメドレーである。
戯曲(演劇)は、もともと個々の作品として存在している。
それらを並べたとき、果たしてリリヤンのように滑らかにつながるだろうか。
演劇における土台はなんだろうか。リズムはどんなだろうか。
案外スラッと流れるかもしれないし、伸びたり縮んだり、穴があいたりしてつながらないかもしれない。
あるいは〝つながる〟とか〝つながらない〟とかですらない、全然別のなにかになるのかもしれない。
いずれにせよ出来上がるものは、役に立ったり立たなかったり、味わい深かったりするのではないだろうか。
なんてことを稽古を見ながら考えている。

「つながらないリリヤンについて」(★★★★ もはや関係ないのでは……?)スタッフ 東彩織

一般社団法人なかふら/中野成樹+フランケンズ

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