次回の公演は1日2ステージのみ。しかも、俳優も制作も演出家も子づれでやって来るという。
アクセシビリティという言葉もあちこちで聞くようになり、「子どもも一緒に観られる舞台」などと銘打つ公演も増えてきた。けれど、一方で子を産み育てている俳優たちのことは誰が考えるのだろう。少子化を軽んじ「やってる感」しか出さずにろくな対策もせぬ政府に対する異議申し立てではないか!! と鼻息を荒くするインタビュアーは、ひらりとかわされる。
強くメッセージを発するなんてことはしていないのに、気づけばうねりに飲みこまれ根底から揺さぶられてしまっている。ナカフラの舞台を観ているかのような時間であった。
(取材・構成:鈴木励滋)
※本インタビューは2021年6月17日(木)、Zoomにて行われました。
中野成樹(以下、中野):最初にすみませんが、今日はうちの4歳半の息子が、さっきお風呂入ってたらお尻がかゆいって。最近ずっとお尻がかゆいって言ってたんですけど、今日はお尻の中がかゆいって、あんまりにも激しく泣くので「#8000」(子ども医療でんわ相談)に相談をしたら
野島真理(以下、野島):うんうん
中野:「じゃあ今から診察を受けてもいいと思いますよ」っていうので、妻が息子を病院に連れてってまして、結局は何事もなかったんですけど。
−それはよかった。
中野:今、帰ってきてる途中なんだけど、息子が寝ちゃってるみたいで。
−はいはい
中野:なので、インタビュー中に、息子を玄関までむかえに行って、だっこして布団に連れていくという作業が、ちょっと入ってしまうかもしれません。
−いえいえ。そんな大変な時にすみません。
ナカフラは、昨年5月に下北沢の駅前劇場で予定していた本公演、「全体観測のための公演(2プログラム)」が新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になった。
−去年、中止になってしまった公演はどんなスタイルで挑もうとしてたんですか?
中野:今までのナカフラのスタイルです。
育児をしていた野島や石橋(志保)たちにも、最低何時間稽古に出られるなら、ぜひ参加してほしいっていうお願いの仕方をしてました。野島は「できるかどうかわかんないけど」って、ご両親とか旦那さんの実家とかに子どもを預けて参加してみるって言ってくれた。だけど、その後にコロナがやって来て
野島:わたしから「わがまま言ってごめんなさい。子どもを預けている高齢の両親に、万が一にもコロナをうつしたくない」って。
中野:そりゃ、もう出ないでいいよって言って。それが去年の2月から3月くらいのことで、結局、野島のこととか関係なく都内では公演できるような状況でなくなっちゃったんだけど
でもね、たぶん、10年以上前の僕なら「家族に感染させたら困るから出られなくなった」なんていう申し出があったら、怒っていたと思う。「おまえの演劇に対しての覚悟はそんなもんなのか」みたいに。でも、その時は「そんなの出なくて当然だよ」って言えた。それはこの10年間くらいの身の回りの出来事が影響してるんだと思う。
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