中野作・演出 シンガポール   Super Japan 参加! ▶︎福田、小泉、田中出演『DRUMS』

Esplanade theatres on the bay(Singapore)
Super Japan –Japanese Festival of Arts-
「Drums」
Director: Shigeki Nakano & Chong Tze Chien (Japan/Singapore)
Recital Studio
14 May, Sat: 3pm & 8pm / 15 May, Sun: 3pm
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 シンガポールの総合芸術文化施設「エスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ」が主催する日本特集《スーパー・ジャパン》は、日本の今と伝統を集めたアート・フェスティバルです。
 その演劇部門に中野成樹が参加します。シンガポールの演出家Chong Tze Chienと共に、能「綾鼓」「恋重荷」の物語をベースとする作品を、二本立てで競作上演いたします。Chong Tze Chienは三島由紀夫の『綾鼓』(「近代能楽集」より)をとりあげ、シンガポールの俳優2名による上演。
一方、中野はそれらの物語より、「いじめ/ゆるし」そして「都市の発展」をモチーフとして浮かび上がらせ、シンガポール・日本(ナカフラ)合同の俳優5名による、新作『キャンプ・サイト』を発表します。ナカフラからは福田毅・小泉まき・田中佑弥が出演します。

中野成樹のコメント
 はじまりは、「シンガポール・日本の演出家が出会い、融合だったり、対称になるような形で、何か一本やりませんか?」 そんなところだったと思います。私は即座に「だったらシェイクスピアかなんかを、互いの解釈で、ぶつけ合ってみませんか?」と応えました。シンガポールの演出家TCさんも「いいと思います!」という反応でした。
しかしその後、「……もし可能であれば……より日本的なものを……ですね……」という控え目なリクエストがどこからか届きました。まあ、わからなくもありません(笑) すると、今度はTCさんから、三島由紀夫の「綾鼓」をやりませんか? との提案がありました。
『近代能楽集』は私も知っていて、「綾鼓」も好きな作品でしたので、「いいと思います!」と応答しました。しかしその一方で、「俺…三島はできねーよー……」というちょっとした不安もありました。
 「三島の基となった能の物語からヴァリエーションを創ってもいいですか?」 「綾鼓」決定から2〜3日後、私は迷ったあげくためしにとそんなリクエストをしてみました。すると「O.Kです!」とすぐさまお返事がきました。臆病な私はさらに続けます、「私がおこなうのは、能の現代化ではなく、能の物語を基にした現代演劇ですが、それでもよいですか?」の念押し。「O.Kです!」の即答。よしいける。そう思いました。その直後、早々にチラシ案が届きました。能面(小面)ドーン!
 「……まじか!」「いやいや、たとえ“そう”だとしても「綾鼓」は老人の恋の話だろ……?」「どうして若い女がこっちを見てるんだ?」などなど、疑問と不安はつきませんでした。急いでTCさんに連絡をとります。冷静で、穏やかで、クレバーな彼なら、きっと何かよい解決をくれると思いました。

中野「えっと、チラシ案ご覧になりました?」
T C「ええ!」
中野「ご存知かと思いますが、TCさんがとりあげる『近代能楽集』って、能そのものではないじゃないですか……?」
T C「もちろん知ってます!」
中野「では、あのチラシの能面…どうですかね?
T C「大丈夫です!」
中野「……えっと、あの能面は小面といって若い娘の……」
T C「もちろん知ってます!」
中野「“綾鼓”は老人の……」
T C「もちろん知ってます!」
中野「では、あのチラシの能面…」
T C「大丈夫です!」
中野「……マジすか?」
TC「マジです!」

 外との出会いはえらく大変で、誤解したくないし、されたくないしって、ともすれば神経質になりがちです。でも外との出会いは、まず無条件にとても面白いものなんだよなあ……とその時あらためて思いもしたのです。そして、僕らはそのチラシにGOを出しました。
 先月に仕上げた僕の台本は、決して無理によせたわけではないのに、マスクをかぶった人物がでてくる、若い可憐な女が主人公の話になりました。間もなく稽古がはじまります。まずは共演者にも、スタッフにも、観客にも、これは能そのものではなく、それを継承したものでもなく、能およびその周辺の芸能の精神性とアイディアへの敬意を胸に秘めた作品である、ということを伝えるところからスタートです。なんとも長い道のりになるかもしれませんが……まあ……「大丈夫です!」とも思っています。うん、すべてが楽しみな今であります。

一般社団法人なかふら/中野成樹+フランケンズ

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