ナカフラなおもて演劇に挑む

−なぜ今回『動物園物語』をやろうと思ったんですか?

中野:そうですね、子どものお尻の穴がいつかゆくなるかわかんないから

野島:ははは

中野:何があるかわかんないですからね。子どものお尻がかゆくなったとか、とつぜん鬱が出ました! みたいにメンバーがバタバタ倒れたり。でも、二人芝居ならどうにかなると思ったんですよね。今パフォーマーが11~2人いるけど、何があっても2人くらいは残るんじゃないか? 本番に、という。
当日は来られても、子どもと一緒な役者もいんだから、本番中に「かゆいよー」って泣きだしたら、ジェリーと犬の物語の途中だろうが抜けざるを得ないわけです。「ちょっと待ってて」ってのは子どもがかわいそうですからね。そしたら誰かが途中からずっとあの長ゼリフを言う、なんてことだってありうる。そんなことも考えて『動物園物語』かなって。あとは、やっぱり去年流行ったZoom演劇に対してZoo演劇じゃないかと。「今、流行ってんだろZoo演劇」って言いたかっただけなんだけど、もうZoom演劇もそんなでもなくなっちゃったけど。

−稽古は順調ですか?

中野:それがですね、この前、下見も兼ねて「えこてん」で稽古したんですよね。子どもも4人ぐらい参加したのかな? で、事前に本当に短い、当初の予定だと冒頭わずか3~4ページのみ上演みたいな感じで、「子どもがいるとそんな気安く先には進めないよ、3~4ページしかできないよ」っていうところでやっていこうと思ってたんだけど、意外とスムーズにできちゃったんですよね。
セリフを割って、「子どもをあやしながらとか途中で抜けたり入ったりしながら、言える人が関係性を取りながら言えるセリフを言ってみようか」なんてやってみたら、意外とできちゃったんですよね。だから、子どもがそこにいるっていうことは、それほどもう足枷じゃなくなってしまったという状況が発覚してしまって。

野島:うふふふふ

中野:で、その後一週間「やばいこれ普通にできちゃうぞ」って悩んでるんですけど。

−まさかの「順調すぎ」なわけですか。そうすると、もっとやりたくなっちゃう?

中野:うん……だけども、そこに子どもがずっといたり、入れ替わりになったりとかっていうところで、全編やれてもそれは実はおもしろくないかな、と。それだったら子どもがいない状態で観る『動物園物語』の方がおもしろいんじゃないかな、と。当初の目論見は、子どもが凄い邪魔しまくって全然先に進まないっところにおもしろさを求めたんだけれど、進めちゃった……というね。

でも今回、フランケンズのメンバーってやっぱうめえなってあらためて思った。ま、それが劇団を続けてるいいとこだと思ってたんだけど、そりゃもう10年以上一緒にやってる人もそこそこの数いるから、やっぱり僕が意図してることとか、僕の指示みたいなものとか非常に伝わりやすいんですよね。

−たとえば?

中野:「セリフは誰が喋ってもいいけども、現実の距離感には嘘をつかないで。嘘つかないで言えたらどの距離から言ってもいい」とか「そのセリフを言うために事前に準備はしてなくていいけど、その時、周りの音が耳に入ったら耳に入った状態でのリアクションで話し出して」とか「関係性は基本的に劇団での年齢の上下関係で構わないから、セリフの語尾変えちゃっていいよ」とかっていう煮詰まった指示でできちゃうんですよね。長年一緒にやってきた経験則でいけるんだなと思った。そういった貯金がかなりあるっていうのもわかって、子どもの相手をしながら芝居をするレベルのことだったらその貯金でクリアできたっていう。だからみんなに対しては役不足の状況が生まれちゃってるから、何かもうちょっとハードルを設定しなきゃいけないなと思っていて、それはもう子どもではないっていうのが分かってきたから、じゃあ今どんなハードルを付け足すとおもしろいのかなと思いつつ。明日稽古なんですけどね、思いつくかな? 明日までに何か。

−子どもではないってことは、子どもがさらに不確定になるような仕掛けを考えるのではないんですね?

中野:そうなんですよ。そこを強化するのはあざとい感じがするんですよ。よろしくない。結局だから、僕らが触れたいものは宇宙の中の定理と神の摂理なので、そこに向かっていかないと演劇やってる意味がなくて。

−でも、あんまりスムーズに行っちゃったら、「なんで子供いるの?」みたいに受け取られるかもしれないし、単なるおふざけとか余興とかに見えちゃう危険性は感じないんですか?

中野:そうですね……子どもとかにあれかな、コロナウイルスのかぶり物を

−それ、あざといやつ!!

中野:ダメか―。
でも、子どもがクリアできちゃったと感じて、一週間なんにも考えつかないなんて前の俺ならありえなくて。
深夜とかに「こんな可能性もある」、「あんな可能性もある」、「あれも試してみたいから、20ページまでは全員覚えて来て」、みたいなLINE連打でしたよきっと。ね?

野島:そうですね。今回も、もうちょっと覚えて来てって言われるかと思ったけど。

中野:でもまあ、今週も仕事いろいろあったし、子どももお尻の穴がかゆかったし。
追い込まないから、ギリギリのところで出てくる洗練とか完成とかヒリヒリ感は無いけど、ぜったいぶっとくなってる自信はある。

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(稽古風景)


一般社団法人なかふら/中野成樹+フランケンズ

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