宇宙の中の定理と神の摂理と人間の本質を求めて

中野:そうなってきて、じゃあナカフラっていう劇団の活動をどうしようかなって考えた時に、ひとつには新しいメンバーを入れて、育児とか病気とかいろんなことがあるメンバーは休んで、今までのように作品をつくっていくっていう考え方があった。
でも、それをやるとうちも子育てをしているから、妻でありスタッフである水渕の負担がえげつなくなるっていうのはわかっていて。でもまあ、世の中の他の人ってやっぱそういう風にやってるんだから仕方ないよなとか。
ただ、僕が主宰で演出家だからなのかわからないけれど、やっぱり今まで一緒にやってきた劇団のメンバーと一緒に何かをやっていく、今までのメンバーでできる方法を探せるんじゃないかな、とゆるゆる考えはじめてもいたんです。

あと、新しいメンバーを入れるとなると、若い人たちになるだろうから、そういうメンバーに対して自分が「責任は取りきれるのかな?」って気がしたんですよ。
若い人は大きな劇場に行きたいとかツアーとか海外での公演をしたいとか、あちこちに客演したいとかっていう野心や向上心があるだろうけど、そういうのに応えてあげられないかも、今の俺の状態とか劇団の状況だとって。だから、若い人を入れていってというのは現実的じゃないのかなと思う部分もあったんですよね。

一方で、子育てチームとかと会うと、何ていうかな、舞台に対する憧れというか、「わたしあんな舞台に出てたんだなぁ」みたいな感傷というか、わずか2年ぐらい前までそれがわたしの生活のすべてだったのにみたいなことを言ってて。そうなのかもしれないけども、そういう人も参加できるんじゃないのか芸術って本来、と思ったんです。で、そんな時に、長島に相談したら他人事のように「応援します」と

−ははは

中野:でもね、その時に長島が「全生活を芸術創作に捧げるか、一切関わらないかの白か黒しかないというのは違うと思っていて、その間にある可能性を掘っていかないとおもしろくない」って言ってくれたから、じゃあそこを掘ってみようと思えたんですよね。

僕にとって演劇を作っていくというのは、宇宙の中の定理を探したり神の摂理に触れたり人間の本質と向き合ってみたり、という作業なんですね。
子育てや普通に仕事してても毎日は充実してるんだけども、それでも「やっぱり宇宙の定理が足んねえな」とふと思って。それで、劇団のオンラインミーティングで子育てしてても病気になっても何があっても宇宙の定理を諦める必要はないよ、っていうようなことを言ったら

野島:そう、「わかんないけど、中やんの今の言葉、感動した!」ってわたしが言ったんだよね

中野:それで「おっし、わかった!」って。とりあえず、やってみるか、ってなったんですよね。3か月くらい前の話かな。
たしかな完成図みたいなものは見えていなかったけど、今の具体的な状況としては、子育てしているメンバーが多いから、子育てしながら作品をやろうって。それも、子どもをパートナーに預けて稽古に来るんじゃなくて、子どもを連れて稽古をしようと。でもそれは、子どもに役をやらせるとかパフォーマンスをやらせようということではなくて、稽古場に子どもがいるっていうだけ。あるいは本番で、パフォーマンスしてる時にそばに子どもがいる、っていうだけ。
でも、それだけでもハードルは高いと思うし、今までのように劇場の中でノイズを全部排除して、作品の完成度をとにかくバンバン洗練させていくのに全意識を向けてたようにはいかないなと。いったんそういう完成度は捨てなきゃ駄目だなって、みんなには伝えたんですよね。自信を持っていた完成度の代わりに、でも何か豊かさみたいなものを手に入れられるような気がして、やってみようと思えたんです。

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(初回の稽古風景。まずは公園に集まった)



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