F/T 17 『半七半八(はんしちきどり)』2017

フェスティバル/トーキョー17
まちなかパフォーマンスシリーズ
中野成樹+フランケンズ
『半七半八(はんしちきどり)』
原案:岡本綺堂「半七捕物帳」より
作•演出:中野成樹
ドラマトゥルク:長島確

2017年10月6日(金)〜9日(月・祝)
松戸・PARADAISE AIR、FANCLUB(受付)、ほか

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出演:竹田英司、田中佑弥、鈴鹿通儀、福田毅、洪雄大
小泉まき、斎藤淳子、北川麗、佐々木愛/
道廣オリヴィエ一真、新藤みなみ/スズキシロー(A.C.O.A)

スタッフ:東彩織、水渕歩知

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『半七半八(はんしちきどり)』 演出ノート

東京都葛飾区の鎌倉という町で生まれ育った。
なので、江戸川の土手にはよく行った。

ちっちゃな頃は段ボールで草すべりをして、
小学校に入ると遠足の定番(「歩け歩け遠足!」という名称)、
中高ではトランペットの練習に精を出し、
大学の頃はぼんやり昼からビールを飲んでいた。

川の向こうが千葉であるということは最初から知っていて、
だから「僕がいるのは東京なのだ…」との自覚もはじめからあった。
その時に感じていた、何ともいえぬ感情。
それは優越感かもしれないし、安堵感だったかもしれない。

川、一本、間に合った。
ギリギリ、境界の内側に、
ギリギリ、ボーダーの上方に(もちろん僕の勘違い)。

たとえば…、

恋人はいますか?
まあ…一応…。
月収は?
とりあえず…手取りで28万…?

一応、そして、とりあえず。
満足はしていないが、了解はしている。
そう、ギリギリ、了解することができてしまう。
そんな場所に生まれ育った。

今回は、川の向こうに住む、川のこちらに憧れる男、半八(はんぱち)の話。

半八は、川の外側に住んでるが、それを了解している。
しかし、それはギリギリの了解ではなく、とても積極的な了解だ。
だからもしかすると彼は満足しているのかもしれない。
そして明るく楽しくボーダーの上方に憧れもする。

彼は松戸から、江戸川を超え、葛飾を通り越し、江戸へと手を伸ばす。

すると、そこへ江戸からの使者がやってくる(お芝居だからね)。
江戸川の内側にある大川(隅田川)の内側の男、半七。
彼は何も了解していない。
浅黒い顔は笑顔だが、どうにも暗い目をしている。

それでも半八は半七に憧れる。
了解が、了解しない、に憧れる。
割り切りが、割り切れなさに憧れる。
つまり、8/2は、7/2に憧れた。

半八はいきおい、どうとないことを難しがり、顔をしかめてみせる。
世界の広さに、自分の居場所の深さに、心をざわつかせようと努力する。
しかし根は単純、彼の苦悩は半端(はんぱ)に終わる。
どんなに難解な事案も、どんなにデリケートな問題も、
アッサリ、スッキリ割切って、中途半端に終わらせる。
半八の半八たる所以である。

さて、ギリギリ了解の僕としては、
半七、半八、どちらを目指すべきなのか。
江戸か、松戸か。

まずは松戸へ行ってみる。

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 当初、今年のF/Tへは同じ「まちなかパフォーマンス」ですが、別の演目・別の場所で参加予定でした。ですが、ある日突如「松戸…興味ありませんか?」と話があり、試しに足を運んでみると、上記に書いたように、元々対岸から眺め続けていた町だったこともあり、一瞬でイメージが降りてきました。岡本綺堂も前々からどこかで何かやりたいなあ…と考えていて、しかしどうにも江戸でやるのは気恥ずかしく、何か“ひねり”がないか探していたところでしたので、この結びつきはラッキーとしかいいようがありません。まだ先の話ですが、次は東京側の縁で今回の発想を発展させられればな(東京から松戸を眺める話)、とさえ…。しかし、あらためて、昔、今、未来ってのは、やっぱりつながっているものなのですね……。つなげてしまう、といった方が正確でしょうか。2017年7月17日 中野成樹

一般社団法人なかふら/中野成樹+フランケンズ

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